産後の骨盤ケアの重要性

痛み・コリ・しびれ

こんにちは。安曇野にしやま整骨院の西山です。

今回の記事は産後の骨盤ケアについてご紹介します。

当院にも、産後の骨盤ケアをご希望される方が多くご来院されます。よって、本記事では産後に起こるお身体の問題と、産後ケアを実施するメリットについてお伝えします。

産後ケアをしない事で起こり得る身体の問題
・姿勢の悪化による肩こり、腰痛や膝痛
・体重増加と身体のプロポーションの崩れ尿漏れや腱鞘炎等

姿勢の悪化による肩こり、腰痛や膝痛

産後の身体の不調で来院される方の多くは、頸肩や腰、股、膝に痛みを訴えられます。これには3つの原因が考えられます。

1、妊娠時および出産によるインナーマッスル低下
姿勢を支えるためには、インナーマッスルが重要です。人は内臓の重みがあるため、どうしても骨盤が前にズレやすくなります。インナーマッスルは、骨盤が前にズレないように、正しい重心の位置に保持する機能があります。しかし、妊娠時は、腹部内臓の重みだけでなく、赤ちゃんの重みが加わります図1。すると、インナーマッスルを含め、骨盤を正しい位置に保持する筋肉は伸ばされ続け、弱化します。これを筋肉の伸展弱化と言います。
インナーマッスルが弱化すると、姿勢を正しい状態に保持できなくなり、重心は不安定になります。不安定な重心を支えようと、頸、腰や膝には通常より負担が大きくかかる事になります(詳しくは正しい立ち姿勢で不調改善、ダイエットを目指す参照)。

図1 妊娠時におこりやすい姿勢の変化
左:正しい姿勢の状態。足、骨盤、耳は一直線
右:妊娠時におこりやすい姿勢。赤ちゃんの重みで骨盤は前方・前傾へ変位し、インナーマッスルは伸ばされた状態となる

2、リラキシンホルモンによる骨盤のゆるみ
骨盤には仙腸関節、恥骨結合という2種類の関節があります図2。妊娠約4ヶ月~7ヶ月までに緩みが増加し続け、恥骨結合は上下、水平方向に平均5mm増加するといわれています。
骨盤のゆるみには、リラキシンというホルモンが妊娠時期に血中で増加し、靱帯や関節を弛緩させる働きがある事から、骨盤のゆるみに関与している説が最も有力です1)
骨盤が緩む事で、赤ちゃんが生まれるための産道は広がり、分娩が可能になります。このように、緩んだ骨盤は分娩時には必要な変化ですが、産後すぐに戻る訳ではありません。諸説ありますが、骨盤のゆるみは産後数ヶ月は継続すると思われます。

図2 骨盤の恥骨結合と仙腸関節
妊娠、出産時にはこの2種類の関節が緩みやすくなる。産道を広げるため、恥骨結合は離開し、ズレやすい。 

3、子育てによる負荷の増加
先述したように骨盤はゆるみ、それを支えるインナーマッスルが低下し、ただでさえ身体は歪みやすい状態となっております。加えて、産後の女性には子育てという大きな身体への負荷がかかります。長時間の抱っこやおんぶ、添い寝、しゃがんでの抱き上げ動作等、これらは全て姿勢を歪ませ、痛みを生じさせる因子となります。

体重増加と身体のプロポーションの崩れ

骨盤のゆるみ、インナーマッスルの低下は身体のプロポーションの崩れにも影響を与えます。特に女性が気にするウエスト、ヒップ、脚のラインは崩れやすくなります。

骨盤が歪み、インナーマッスルが低下すると、内臓を支える力が弱くなり、胃等が下垂し、ポッコリお腹になりやすくなります図3

図3 インナーマッスル低下によるポッコリお腹
インナーマッスルが働かないと、腹圧が弱くなり、内臓は下垂する。結果として、ポッコリお腹となる

また、腰、骨盤、股関節を中心とした骨格が正しい位置関係(ニュートラルポジション)を保持できなくなり、関節の可動域の低下、アウターマッスルへの持続的な負荷が増加しますリンク。筋肉は普段はゆるみ、運動の時は収縮する事でポンプ作用が働き、リンパ等の老廃物を除去します。

しかし、関節が上手く動かせなくなったり、筋が常に収縮した状態となると、このポンプ作用が失われ、リンパへの老廃物が蓄積します。すると、股関節~足の筋肉周囲は浮腫みや冷え、筋肉の膨隆がおこり太くなります。また、筋肉の運動量が減り、基礎代謝が低下します。

また、妊娠中には7~10kg体重は増え、出産により 胎盤や羊水等で 4~5kg程度は減るとされていますが、身体が歪んだままでは運動量が落ち、代謝が下がった状態となるため、元の体重に戻りにくい体質となります。

尿漏れや便秘、腱鞘炎等

出産、とくに自然分娩においては、骨盤底にて膀胱や腸を支えている「骨盤底筋」が損傷され、弱化しやすくなります。支えを失った膀胱や腸は上手く働く事ができず、尿失禁や便秘等の発生リスクが高まると言われています2)

また、産後の育児中には手の腱鞘炎も良く発生します。原因として、赤ちゃんを抱えながら家事をする等、負担が多くなる事もありますが、ホルモンバランスの乱れも影響があると思われます。

女性ホルモンが減少すると、骨量の減少や、コラーゲン合成が低下すると報告されています2。出産による胎盤の排出によって女性ホルモン量は減少する事から、腱鞘を構成するコラーゲンの合成量も減少する事が考えられます。コラーゲン合成減少により、負荷に対する修復が追い付かない事が、発生リスクの増加に寄与しているのかもしれません。

以上の理由により、産前、産後~数ヶ月においては、女性の身体は大きな変化をおこします。よって、この時期に適切なケアをできるかどうかで、今後のお身体の不調やプロポーションに大きな影響を与える事が考えられます。言い方を変えると、産後ケアは、これまでに歪んできたお身体を整え、不調のない、キレイな身体をつくる絶好のタイミングであると言えます。

まとめ 
1.産後の骨盤は、ホルモンの影響により歪みやすい状態となっている
2.妊娠や産後の抱っこにより、インナーマッスルが低下し、ポッコリお腹、姿勢の悪化や尿漏れ、便秘の原因となる
3.適切な産後ケアを行う事で、不調の予防、プロポーションの改善が期待できる

ご参考になれば幸いです。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました(^-^)

参考文献
1) Rolf Hagen:Pelvic Girdle Relaxation from an Orthopaedic Pointof View ;1974
2)Diane Lee:妊娠・出産と併発する恐れのある問題 ;骨盤帯ー臨床の専門的技能とリサーチの統合ー ; 東京 ;エルゼビアジャパン株式会社; 2013;125-141.
3)C Castelo-Branco , F Pons, E Gratacós, A Fortuny, J A Vanrell, J González-Merlo:Relationship Between Skin Collagen and Bone Changes During Aging:1994

*本記事は一般の方にもご理解頂ける事を趣旨としているため、医学的には適切でない表現が含まれている場合がありますが、予めご了承ください。

西山 伸夫
安曇野にしやま整骨院 院長 
柔道整復師 修士(健康科学)

安曇野市 穂高の整骨院
腰痛 肩こり 不調の原因を特定し
骨盤、姿勢矯正で根本改善

ホームページ↓
http://azumino-nishiyama.com

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