こんにちは。安曇野にしやま整骨院の西山です。
今回の記事では、正しい立ち姿勢について知っていただき、実践するための方法をご紹介します。
正しい立ち姿勢を手に入れる事のメリット ・関節、筋肉への負担が軽減し、肩こりや腰痛等の不調がおこりにくくなる ・関節の動きが改善し、日常生活動作が楽になり、疲れにくくなる ・代謝が上がり、運動パフォーマンスの向上、ダイエットにつながる
理想とされる姿勢
まず、正しい立ち姿勢の定義ですが、
- 骨盤はわずかに前傾
- 足の外果(外くるぶし)の少し前
- 大転子(股関節の出っ張った骨)
- 肩峰(肩の中心部)
- 耳たぶ、もしくは耳の穴
を線で結んだ際、一直線上で立てている状態です1)2)3)。この状態にある時、脊柱は緩やかなS字カーブを描くことで、重力による身体への負荷を均等に分散できます 理想姿勢の図1。
図1 理想的な立ち姿勢
外くるぶしのやや前・大転子・肩峰・耳の穴が一直線となった状態が身体への負担が最も少なく、理想的な姿勢と定義されている。
また、各関節はニュートラルな位置関係を維持でき、靱帯や筋肉、筋膜の緊張バランスが最適な状態に保たれるこで本来の運動機能、可動域が確保されます。
上記のような正しい骨、関節の位置関係が失われた状態を不良姿勢と言います。
不良姿勢の原因は、運動不足や悪い生活習慣(例:長時間のスマホ、デスクワーク、足を組む動作等)による、インナーマッスルの低下にあると考えられます。
筋肉には関節を動かす役割のアウターマッスルと、関節を固定し、姿勢を安定させる役割のインナーマッスルがありますが、日常的な不良姿勢、悪い生活習慣が継続されると、インナーマッスルは働かなくなり、次第に弱くなります。
すると、脊柱の土台である骨盤は正しい位置を保持できなくなり、前方へ変位します。土台の骨盤が前方へずれることで、連結している脊柱・股関節の位置関係は歪んできます。
不良姿勢と慢性痛
例えば、骨盤が前方、前傾をおこすと、反り腰、猫背の姿勢となります。反り腰は、腰椎椎間関節への負荷が増大し腰痛の原因となります。猫背は頭部が前方へ変位することで頸を支える筋、関節へ負荷が増大し肩こり、頭痛等の症状につながります図2。
また、股関節は骨盤の臼蓋に連結しているため、骨盤が前傾・後傾するとその位置関係が変わってしまいます。例えば、骨盤が前傾すると、大腿骨頭前面と骨盤の臼蓋は股関節を曲げる運動にて衝突(インピンジメント)しやすくなり、関節唇の損傷や痛みにつながります図3。
図3 骨盤前傾が股関節屈曲時に与える影響
骨盤が前傾すると、骨盤臼蓋の前面と大腿骨頭との接地面積が増え、股関節を屈曲した際に衝突し、痛みを生じやすくなる。
このように、不良姿勢は関節可動域を悪化させ、誤った運動パターンによる関節への負荷、痛みを引き起こします。痛みにより、患部をかばう事でさらに姿勢は悪化し、関節運動制限は助長され、
関節運動制限→誤った運動パターン→関節への負荷増悪→炎症や痛み→関節運動制限・・
といった悪循環が続く事になります。
この悪循環が長く続くと、筋肉、筋膜の短縮や硬化、靱帯、関節軟骨の変性や骨の変形は進行し、症状は悪化していきます。そして、脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、変形性関節症等の疾患リスクは高まっていきます。
以上の理由により、慢性的なコリや痛み等の症状は放置しても改善は難しく、逆に、放置により負荷は蓄積して状況は悪化していく事が考えられます。
また、治療は患部へのマッサージだけでなく、骨盤・背骨矯正及びインナーマッスル強化、さらには日常生活動作の悪い習慣や姿勢訓練を行い、改善しなければ、根本的な解決はできないと考えております。
不良姿勢と自律神経機能
自律神経には交感神経と副交感神経があり、呼吸、血流、内臓機能、ホルモンバランス等、生命活動にとって重要な役割があります。そして、交感神経幹(交感神経の集まり)は脊椎の脇を縦走しており、痛みや運動に関わる脊髄神経と交通しています図4。
図4 脊柱と交感神経幹
赤色が自律神経幹を示す。脊柱の脇を併走し、痛み等の感覚を司る脊髄神経(黄色)と交通している。よって、不良姿勢による脊柱の歪みは、痛みだけでなく、自律神経の機能障害をおこす事が考えられる。
よって、脊柱の歪みは脊髄、交感神経への悪影響が推察され、呼吸過多、手足の冷え、消化不良、ホルモンバランスの崩れ等が生じる可能性が高まります。
不良姿勢とポッコリお腹、下半身太りやむくみ
正しい姿勢を維持するためには、インナーマッスルが重要であると前記しました。
さらにインナーマッスルは、腹腔(胃や腸がある内臓スペース)の圧力を保ち、内臓が正しい位置関係を維持する働きもあります。インナーマッスルが働かないと、腹腔の圧力は低下し、胃や腸は下垂してきます。これがポッコリお腹の原因です。そして、胃や腸が下垂した状態では、本来の消化活動が低下し、内臓脂肪蓄積の原因となる事が考えられます図5。
図5 ポッコリお腹と内臓下垂
左:インナーマッスルが働いている状態。胃腸がある腹腔が保たれ、お腹も凹んでいる。
右:インナーマッスルが働いていない状態。腹腔が狭まり、ポッコリお腹となり、胃は下垂し腸は圧迫される。
また、骨盤が正しい位置にない状態では、股関節の動きが制限されます。股関節は、人体の中で最も可動域が大きく、大きな筋肉がついています。よって、股関節の運動制限は筋肉の運動量低下への影響が大きく、その状態が続くことで股関節周囲の筋肉の代謝は低下し、脂肪がつきやすくなったり、血流が悪くなり、下半身太りやむくみをおこします。
正しい姿勢トレーニングの方法
不良姿勢のデメリットを知っていただいた所で、正しい姿勢のトレーニングへうつりましょう。
骨盤や背骨の矯正、筋肉の調整等は残念ながら専門的な治療が必要になりますが、正しい姿勢を日々実践するだけでも、症状の進行をある程度抑える効果が期待できます。
自分の姿勢パターンのチェック
まずは、ご自身の骨盤が前に傾いているのか、後ろに傾いているのかをチェックしましょう。
- 壁に頭、背中をつけて立ちます。
- 踵と壁は指3本程度空けます。
- 腰と壁の間に手のひらが入るかを確認します。
骨盤が理想的な傾きの状態では、手のひらが一枚ギリギリ入るか、途中でひっかかります。
もし手のひらがすっぽり入ってしまうようであれば、骨盤が前傾している事を示唆します。
一方、腰と壁に隙間ができず、手のひらがほとんど入らない場合は骨盤が後傾していると考えられます。
また、肩や頭が壁につかない、頭はついても顎が上がってしまうようであれば、強い猫背が示唆されます。
ご自身の骨盤の傾きの状態が評価できたら、今度は修正するエクササイズをご紹介します。
骨盤前傾を修正するエクササイズ(壁と腰に手がすっぽり入ってしまう人)
- 壁に頭、背中をつけ、踵は指3本程度空けて立ちます。
- 腹式呼吸を行い(腹式呼吸トレーニング記事参照)呼気時に身体をわずかに前に倒します。
- そのまま呼気と同時に、腰を壁に押し付けます。
- 腰を壁に押し付けたまま、腰が壁から離れないようお腹とお尻に軽く力を入れたまま、徐々に体を後ろにおこします。
- 腰が壁から浮かずに身体をおこせたら、軽く顎を引き、肩開いて壁に近づけます。この時、肩に力が入らないように注意しましょう。
- 壁と腰の間に手を入れ、引っ掛かる程度のスペースであれば適正な姿勢です。
骨盤後傾を修正するエクササイズ(壁と腰がくっついてしまう人)
- 壁に頭、背中をつけ、踵は指3本程度空けて立ちます。
- 腹式呼吸を行います。
- お尻に軽く力を入れ、壁に押し付けます
- みぞおちの上部分を前に突き出すように、胸をはります。(肩甲骨を壁に押し付け、お尻と肩甲骨が近づくイメージ)
- 肩甲骨が壁から離れないようにしたまま、顎を引き、後頭部を壁につけます。
- 壁と腰の間に手を入れ、引っ掛かる程度のスペースであれば適正な姿勢です。
壁を使って正しい姿勢の感覚がつかめたら、次は壁がない状態でのトレーニングにうつりましょう。
正しい重心の立ち方トレーニング
まず準備として、ご自身の重心をチェックするための指標を作ります。ご自宅であれば建具の柱等、一直線の物であればなんでもかまいません(なければ壁に直線のテープを貼ってください)
- まずは目印の柱の脇に立ちます。
- 外くるぶしの最も出っ張っている部分より少し前側を、柱に合わせます。
- 大転子という股関節の骨(ズボンのポケット下部と、スリット線の交わる位置あたり)を手に平全体で触り、最も出っ張っている部分を柱に合わせます。
- 肩の真ん中あたりを柱に合わせます。
- 最後に顎を引きます(肩の上に頭を乗せるイメージ)
ポイントは肩を柱に合わせるときに、腹式を意識して股関節の骨が前に出ないようにすることです。胸を張る事に意識が向きすぎると、股関節が前に出てしまうので注意しましょう。
いかがでしたか?
正しい姿勢と重心の感覚を身体で覚えていただけたでしょうか?
「目標は日常生活で、立っている時は常にこの意識を継続し、習慣化する事です」
開始して最初は、身体が慣れないためつらく感じるかもしれません。
しかし、継続する事で脳、身体が正しい姿勢を記憶すると、だんだんと身体が楽になっていくのを感じられるかと思います。
もしご自身でやってもうまくできない場合、筋力低下や筋の短縮、関節のズレや不動化が強い事が示唆されます。また、姿勢の状態のチェックがご自身で難しい場合もあります。
その場合は治療が必要になりますので、専門家にご相談ください。
まとめ
1.不良姿勢により、肩こり、腰痛や自律神経失調、体型の崩れがおこる場合がある
2.壁を使って自身の姿勢パターンを評価する。
3.姿勢パターンに応じた練習を継続して実施し、正しい姿勢を習慣化する事が大切
以上
ご参考になれば幸いです。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました(^-^)
参考文献
1)竹井 仁;立位姿勢の評価と修正エクササイズ ;姿勢の教科書 ; 東京 ;ナツメ社; 2015;102-129.
2)新関 真人;重力・重心と理想的な姿勢 ;姿勢の教科書 ; 神奈川 ;医道の日本社; 2003;4-11.
3)KENDALL;姿勢:アライメントと筋バランス;筋:機能とテスト-姿勢と痛み- ; 東京 ;西村書店; 2006;79-99.
4)市橋 則明;股関節の運動学;身体運動学 関節の制御機構と筋機能 ; 東京 ;メジカルビュー社; 2017;183-218.
*本記事は一般の方にもご理解頂ける事を趣旨としているため、医学的には適切でない表現が含まれている場合がありますが、予めご了承ください。
西山 伸夫
安曇野にしやま整骨院 院長
柔道整復師 修士(健康科学)
安曇野市 穂高の整骨院
腰痛 肩こり 不調の原因を特定し
骨盤、姿勢矯正で根本改善
ホームページ↓
http://azumino-nishiyama.com