腹式呼吸トレーニング -呼吸から肩こり・腰痛にアプローチ-

痛み・コリ・しびれ

こんにちは。安曇野にしやま整骨院の西山です。

前回記事「その猫背や肩こり、腰痛は呼吸が原因かも?」で、腹式呼吸についての大切さを説明しました。今回は、実際のトレーニング方法をご説明していきます。

まず、下記がトレーニングを行う事のメリットです。

正しい呼吸方法を身に着ける事のメリット
姿勢改善し、肩こりや腰痛等の不調がおこりにくくなる
・自律神経が整い、ストレス、痛みが緩和する
・代謝が上がり、運動パフォーマンスの向上、ダイエットにつながる

・姿勢が改善し、肩こりや腰痛等の不調がおこりにくくなる
慢性的な肩こりや腰痛の原因の多くは不良姿勢にあります。正しい姿勢を支えるためにはインナーマッスルが重要です。そして、インナーマッスルは姿勢保持と呼吸という2つの役割を持っています文献。よって、呼吸機能を高めることが、インナーマッスルの機能を改善する事につながります。詳しくは前回記事 「その猫背や肩こり、腰痛は呼吸が原因かも?」 を参照ください。

・自律神経が整い、ストレス、痛みが緩和する
胸式呼吸の状態は、自律神経の交感神経が優位となります。すると、身体は戦闘モードになり、筋肉は緊張し、心拍数が上がり、手足が冷えたり、消化が悪くなったりします。そのような状態が続くと、身体はストレス過多となり、元々神経の痛みがある場合は痛みが増強し1)、さらに交感神経優位となり・・という悪循環に入ります。
腹式呼吸が身につく事で、副交感神経が優位となり、ストレスが緩和され、身体の緊張がほぐれ、痛みが緩和します。

・代謝が上がり、運動パフォーマンスの向上、ダイエットにつながる
胸式呼吸の状態は、呼吸が浅く、早くなります(呼吸過多の状態)。肺は上部は細く、下部が広くなっているため、腹式呼吸で横隔膜が下がらないと、肺の下部はしっかり膨らまず、呼吸効率が悪くなります図1。すると、呼吸過多となり、必要以上に二酸化炭素を排出してしまいます。
血中二酸化炭素濃度が下がることで、血液中の酸素がヘモグロビンから解離できず (ボーア効果) 、身体の細胞へ酸素が行き届かなくなり、酸欠状態になります2)
腹式呼吸が身につくと、空気を楽に取り込めるため、呼吸は穏やかになります。結果、血中の酸素は身体の細胞の隅々まで届けられます。
細胞は酸素があることで効率が良いエネルギー産生ができ、代謝が上がります。よって、運動により身体は疲れにくくなり、基礎代謝が上がる事で太りにくい身体となります。

図1 呼吸時の横隔膜の動き

吸気時、腹式呼吸で横隔膜が下がる事により、肺は下部までしっかり膨らむことができる。胸式呼吸では、肺の下部が膨らまないため、呼吸効率が下がる。

以上のように、正しい呼吸を身に着けることは健康、美容面で多くのメリットがあります。この機会にぜひ身につけましょう。

それではまず、トレーニングを始める前に、現状におけるご自身の呼吸状態を評価しましょう。

呼吸の評価方法
仰向けにて行います。理由は、横隔膜等のインナーマッスルは姿勢を保持する機能も持っているため、姿勢保持に筋力を使わない仰向けの方が、呼吸での筋肉の動きに意識を向けやすいためです。

手順
1.仰向けになり、膝を90°程度に曲げ、片方の手を胸、もう片方の手をおへそのやや上におきます。
2.ゆっくり深く、鼻呼吸を行います。
3.息を吸った時、胸とお腹のどちらが大きく動き、膨らむか。また、吸い始めにどちらが先に動くかに意識を集中します
4.息を吐いた時、お腹がへこむかどうか

理想とする呼吸は、息の吸い始めは腹部が前、左右に広がり(下位肋骨が開くイメージ)、後半にわずかに胸が扇状に膨らみ、吐く時は腹部がへこみ、肋骨が左右の幅が閉じる動きです3)

誤った呼吸法(胸式呼吸)は、息を吸うとき、胸が先に動いたり、肩が前の方に持ち上がります。

現状の呼吸の状態が把握できたら、次は仰向けでの腹式呼吸トレーニングにうつります。

腹式呼吸トレーニング(仰向け
1.仰向けになり、膝を90°程度に曲げ、両手は下部の肋骨とみぞおちを包む。
2.ゆっくり、静かに息を吐く。この際、下位肋骨が中心に向かってしぼみ、腹部がみぞおちに向かって凹んでいくイメージ。
3.ゆっくり、静かに息を吸う。この際、下位肋骨が左右に広がり、腹部が前方に膨らんでいくイメージ。胸は最後にゆっくり扇状に広がるイメージ。
4.腹式呼吸のイメージがつかめたら、呼吸をさらにゆっくり、静かに、一定のリズムに整えることに集中する。

仰向けにて、腹式呼吸のイメージができたら、次は座った状態での練習へうつります。

座位での腹式呼吸トレーニング
1.椅子、もしくはベッドに座ります。(ソファ等、座面が柔らかすぎたり、身体が後ろに倒れてしまう椅子はNG)
2.骨盤は前後に傾かず、背筋を伸ばす。頭のてっぺんが天井に引っ張られているイメージ。
3.手は下腹部に置き、脇腹にわずかに力が入った状態で、姿勢を維持する。
4.ゆっくり、静かに息を吐く。この際、下位肋骨が中心に向かってしぼみ、腹部がみぞおちに向かって凹んでいくイメージ。脇腹の筋肉は少しかたくなった状態を維持する。
5.ゆっくり、静かに息を吸う。この際、下位肋骨が左右に広がり、腹部が前方に膨らんでいくイメージ。胸は最後にゆっくり扇状に広がるイメージ。 脇腹の筋肉は少しかたくなった状態を維持する。
6.腹式呼吸と脇腹の力の入れ方のイメージがつかめたら、呼吸をさらにゆっくり、静かに、一定のリズムに整えることに集中する。

座位でもできるようになったら、次は立位で行いましょう。

立位での腹式呼吸トレーニング
1.まずは正しい重心バランスで立ちます。(鏡で横から体をみて、くるぶし、股関節の中心、肩、耳の穴が一直線になった状態)
2.骨盤は前後に傾かず、背筋を伸ばす。頭のてっぺんが天井に引っ張られているイメージ。
3.肩の力を抜いて手は下腹部に置き、脇腹にわずかに力が入った状態で、姿勢を維持する。
4.ゆっくり、静かに息を吐く。この際、下位肋骨が中心に向かってしぼみ、腹部がみぞおちに向かって凹んでいくイメージ。脇腹の筋肉は少しかたくなった状態を維持する。
5.ゆっくり、静かに息を吸う。この際、下位肋骨が左右に広がり、腹部が前方に膨らんでいくイメージ。胸は最後にゆっくり扇状に広がるイメージ。 脇腹の筋肉は少しかたくなった状態を維持する。
6.腹式呼吸と脇腹の力の入れ方のイメージがつかめたら、呼吸をさらにゆっくり、静かに、一定のリズムに整えることに集中する。

いかがでしたか?
寝ている状態より、座位→立位に進むにつれ、腹式呼吸が難しく感じられたかもしれません。

インナーマッスルは、姿勢と呼吸という2つの機能を同時に行うため4)、インナーマッスルが弱かったり、筋肉へ上手く脳からの指令が届かないと、正しい姿勢、正しい呼吸は行えません。

また、慢性的な不良姿勢、誤った呼吸の状態にあると、呼吸に関わる背骨や肋骨等の関節、呼吸のための筋肉がかたくなり、うまくできない場合もあります。
このような場合は、治療が必要です。

重要なのは、

「正しい呼吸・姿勢を知り、日常生活で意識することを習慣化する」

事だと思います。そうすることで、意識から無意識に近い状態で実施できるようになってきます。

是非今日から取り組んで頂けたらと思います。

まとめ 
1.まずは現状の呼吸の状態を知る。
2.トレーニングは寝た状態から座位、立位へと移行していく。
3.正しい呼吸を日常生活で常に意識し、習慣化することが重要。

以上

ご参考になれば幸いです。

今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました(^-^)

参考文献
1)矢島 弘毅 太田 英之;CRPSの最近の知見;関節外科 ; 東京 ;メジカルビュー社; 2018;37-6;73-76.
2)パトリック・マキューン;誰もが誤解している酸素のパラドックス ;人生が変わる最高の呼吸法 ; 東京 ;株かんき出版; 2017;53-55.
3)Craig Liebenson;呼吸パターン障害のリハビリテーション;脊椎のリハビリテーション〈上巻〉 ; 東京 ;産学社; 2008;370-388.
4)柿崎 藤泰;インナーユニット(主に横隔膜) ;胸郭運動システムの再建法 ; 2017;神奈川;ヒューマン・プレス;72-76.

*本記事は一般の方にもご理解頂ける事を趣旨としているため、医学的には適切でない表現が含まれている場合がありますが、予めご了承ください。

西山 伸夫
安曇野にしやま整骨院 院長 
柔道整復師 修士(健康科学)

安曇野市 穂高の整骨院
腰痛 肩こり 不調の原因を特定し
骨盤、姿勢矯正で根本改善

ホームページ↓
http://azumino-nishiyama.com

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