こんにちは。安曇野にしやま整骨院の西山です。
今回のテーマは「呼吸」です。普段当たり前のようにしている呼吸ですが、健康にとって、実は重要な関わりがあります。下記が本記事の要旨です。
記事の要旨
・呼吸に関わる筋肉は、姿勢に関わる筋肉と密接な関わりがある。
・誤った呼吸は不良姿勢となり、肩こりや腰痛の原因となる場合がある。
・慢性的な肩こり、腰痛等の改善のためには、呼吸方法に着目することも重要。
日頃の診察において、姿勢が悪い方、肩こりがある多くの患者さんは、肩に常に力が入り、口呼吸もしくは胸式呼吸となり、上手く肩の力が抜けない状態となっており、しばしば症状改善の妨げになります。
なぜ、このような事がおこるのでしょうか?
理由は、呼吸に関わる筋肉と、姿勢を支える筋肉の関連性にあります。
呼吸に関わる主な筋肉は、頸部の奥にある筋肉(斜角筋)、横隔膜と腹部、背骨の深部にあるインナーマッスル(腹横筋・骨盤底筋・その他肋間筋等)です。
その中でも、特に重要なのが横隔膜です。
横隔膜は肺がおさまっている胸腔の下面にて、ドーム状の形をした筋肉で、中央にはドームの支柱のような役割を持つ腱(腱中心)と、下部の肋骨、背骨を結んでいます図11)。
普段、リラックスした状態で息を吸う時、横隔膜は収縮する事でドームが平になり、お腹側(腹腔)へ引き下げられると同時に、下部肋骨は前後左右に開いて、胸郭を拡大させます。この時の肋骨の動きは、バケツのハンドルの動きに例えるとイメージしやすいかと思います図2。
このような動きによって、胸腔内は圧が下がり、肺全体がしっかり膨らむことで、楽に呼吸できます。
もう一つ、重要な要素が「鼻呼吸」です。本来、鼻は呼吸するため、口は食事を摂るためと、役割が分かれています。なぜなら鼻の機能は、空気を吸う際、空気中の汚れを取り除いたり、温度を温めたり、湿度を与えたりと、フィルターの役割を備えているからです。
解剖学的にも、口腔→喉頭より、鼻腔→喉頭の方が空気の通り道が直線的で、広くなっており、通常の呼吸においては、効率よく呼吸ができるよう設計されています図3。
図3 鼻腔・口腔の側面断面図
口腔より鼻腔の方が内側は広くなっており、空気の通り道も直線に近い(2)より抜粋)
(青い線は空気の通り道を示す)
一方、日常的なストレス、緊張等が続くと、身体は戦闘モード(交感神経優位)となります。戦闘モードにおいては、骨格筋へより多くの酸素が必要となるため、一度に大量の空気を吸おうと、口呼吸・胸式呼吸になります。
口呼吸・胸式呼吸となると、頸部の呼吸補助筋(胸鎖乳突筋・僧帽筋・肩甲挙筋・斜角筋)の働きが優位になります。
この反応は、一時的であれば良いのですが、ストレスが続くと、常に口呼吸・胸式呼吸が続く事になります。すると、常に頸肩に力が入った(呼吸補助筋優位の状態)となります。
この状態においては、普段は呼吸補助筋として働かない大胸筋、小胸筋、広背筋、前鋸筋等の筋肉も緊張し、胸郭を持ち上げようと働きます図43)。
図4 胸式呼吸が優位となった状態
胸式呼吸が優位となると、肩が持ち上がり、頸部、胸部の筋肉に常に力が入っている事が分かる (3)より抜粋)
さらに、横隔膜がうまく働かなくなると、前述の肋骨のバケツハンドル様運動が阻害され、肋骨と背骨の関節(肋椎関節)は血流が低下し、関節が固まっていきます。
結果、身体は猫背になります。猫背になると、頭部前方位、頸部伸展位によって口が開きやすくなり図5、さらに口呼吸・胸式呼吸が助長されます。
そして、頸肩に力が入った状態が続く事で、さらに交感神経が優位になりやすくなります。すると、
交感神経優位→口呼吸・胸式呼吸→猫背による頸部の筋緊張→交感神経優位亢進・・・
という悪循環ができあがる事で、慢性的な肩こりや息苦しさ等の不調をおこします。
一方、呼吸の主要な筋肉である横隔膜、背骨のインナーマッスルは姿勢を支え、背骨を安定させるという重要な役割も持っています図6。
よって、横隔膜を正しく使う腹式呼吸ができないと、姿勢の悪化、腰への負荷の増加が起こります。
さらに、心肺機能が弱い人は、腰を酷使する有酸素運動( 例えば雪かきや荷物運び等) においては横隔膜、インナーマッスルは呼吸に優先的に使われ、背骨が不安定となり、腰痛をおこしやすいと言われています。
肉体仕事、重作業が多い仕事の方は、インナーマッスルを鍛えると共に、やはり体力(心肺機能)を鍛えることも重要かもしれませんね。
まとめ 1.通常は鼻呼吸、横隔膜を使った腹式呼吸が正しい呼吸である。 2.口呼吸・胸式呼吸は猫背、肩こり・ストレスを引き起こす原因となる。 3.腹式呼吸が上手にできないと、背骨が不安定となり、腰痛の原因となる 4.慢性的な猫背、肩こり等に対しては、姿勢だけでなく呼吸の評価・治療も重要
以上
ご参考になれば幸いです。
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございました(^-^)
正しい呼吸の訓練方法についてはまた別の記事に記載させていただきますので、よろしくお願いします。
参考文献
1)竹井 仁;頭部前方位と胸椎後弯のアライメント・症状・原因 ;姿勢の教科書 ; 東京 ;ナツメ社; 2015;132-133.
2)Anne M. R. Agur. Arthur F. Dalley Ⅱ;口峡と扁桃 ;グラント解剖学図譜 第五版 ; 東京 ;医学書院; 2007;774-775.
3)Craig Liebenson;呼吸パターン障害のリハビリテーション;脊椎リハビリテーション〈上巻〉 ; 東京 ;産学社; 2008;370-388.
4)柿崎 藤泰;インナーユニット(主に横隔膜) ;胸郭運動システムの再建法 ; 2017;神奈川;ヒューマン・プレス;72-76.
*本記事は一般の方にもご理解頂ける事を趣旨としているため、医学的には適切でない表現が含まれている場合がありますが、予めご了承ください。
西山 伸夫
安曇野にしやま整骨院 院長
柔道整復師 修士(健康科学)
安曇野市 穂高の整骨院
腰痛 肩こり 不調の原因を特定し
骨盤、姿勢矯正で根本改善
ホームページ↓
http://azumino-nishiyama.com