慢性の痛み改善に“長期目線”の重要性 ―継続は力―

その他

はじめに

慢性的な痛みに対する治療において、結果が出ないパターンは2つあります。一つ目は正しい姿勢や動作、セルフケアを実行できない事。二つ目は短期で治療を終わらせてしまう事です。これは資産形成やダイエットと同じで、短期的に変化を求めると失敗やリバウンドにつながります。
当院では、姿勢や動作の癖が身体に根付いた状態を「習慣」や「身体の記憶」と捉え、日々確実に効果を積み重ねて結果を出すことを大切にしています。そのために「時間を味方にする治療計画」が不可欠です。


なぜ「長期目線」が必要か?

① 無意識に定着した姿勢・動作は、脳の再教育が必要

長年にわたり繰り返された姿勢や動作は、習慣として脳や神経系に記憶され、無意識に行われるようになります。そのため、短期間の施術や筋力強化だけでは根本的な修正には至りません。
新しい動作パターンを定着させるには、繰り返しの学習と一定の時間が必要です。

② 悪い状態が身体の組織に“構造的に記憶”されている

慢性的な不良姿勢や歪みは、筋肉・皮膚・関節・骨などに時間をかけて変化を及ぼします。そして、これらが悪くなるのには順序があります。以下、説明していきます。

身体が硬くなっていく順序

1. 筋肉・筋膜の硬化

長期の不良姿勢や過負荷により、まずは筋肉や筋膜が硬くなります。
この時点で筋膜と皮膚の間の滑走性が低下し、患者さん自身も「皮膚が引っ張られる感じ」や「つっぱり感」を自覚することが多くあります。

2. 皮膚・皮下組織の滑走障害(癒着)

筋膜の硬化が進み、慢性炎症や微小外傷が積み重なると、皮膚―皮下脂肪―筋膜の層が癒着し、独立した滑走性を失うようになります。
施術で皮膚をつまんだりスライドさせた際に「硬い」「動かない」と感じられるのは、この段階です。
実際、瘢痕治療や慢性痛領域の研究でも、皮膚の滑走性低下が可動域制限や痛みに寄与することが報告されています(Stecco A, Fascial densification and pain, PM R. 2014)。

3. 関節包・靱帯の拘縮 → 骨の変形

皮膚や筋膜での滑走障害が固定化すると、さらに深部組織へ影響が及びます。
関節包や靱帯が拘縮し、関節可動域が制限され、長期化すると骨そのものの形に変化を及ぼしてしまいます。


つまり、悪化は「筋肉・筋膜 → 皮膚滑走障害 → 関節包・靱帯 → 骨変形」へと進行し、改善はその逆をたどる必要があるのです。
悪い状態が長く続けば続くほど治療に時間がかかるため、根本的な改善は「気づいた今が一番若い時」と考え、できる限り早期に取り組むことが大切です。

組織ごとの代謝周期(科学的根拠)

慢性的な痛みにおいて、組織構造が変化している事を述べました。そして、その組織はそれぞれの細胞から成り立っています。施術という刺激を加えると、その状態が細胞へ伝達され、身体を回復させようとする方向に働こうとします。しかし、その変化には、必ず必要な時間が存在します。

組織代謝・ターンオーバーの目安出典
皮膚(表皮細胞)約40〜56日で更新Lavker RM, Sun TT. J Invest Dermatol. 1983 PubMed PMID: 6827031
皮膚(角層通過時間)若年者で約20日、高齢者で+10日idem
筋肉(タンパク質代謝)数日〜数週で合成・分解が進むWilkinson DJ et al. Nat Rev Endocrinol. 2023 PubMed PMID: 36854391
骨(リモデリング全体)成人で約10年で全体更新Manolagas SC. Endocr Rev. 2000 PMC5322859
骨(BMUサイクル)1サイクル約17週(約4ヶ月)Parfitt AM. Bone. 1983 PMC3028072

これらの研究が示すように、皮膚は数ヶ月で更新されても、骨や関節は数年単位でリモデリングされるため、慢性的な歪みを根本から改善するには時間を要します。また、これは理論上の数値で、実際には日常の負担や悪い姿勢の習慣による負担が加味されるため、さらに時間が要する事が多いです。

以上の細胞生物学的理由から、数回~短期で治すという魔法のような治療は存在しないのです。(痛みがなくなっても、組織構造は変わっていないため、時間とともにぶり返す事になります)

一回の治療で治るゴッドハンド・・・そのような言葉には注意が必要ですね。


「1年目安」が現実的な理由

細胞生物学的観点に加え、私自身の臨床経験からも、10年かけて歪んだ身体や習慣は、少なくとも1年ほどの継続的なアプローチが必要だと感じています。
これは、脳や神経の再教育、皮膚や筋肉の短期的な変化だけでなく、骨や関節といった長期代謝組織の修正に必要な時間を考えれば当然といえます。
資産形成やダイエット同様、短期間で「結果」を求めると再発やリバウンドのリスクが高くなります。


当院の治療姿勢:持続可能なプランで確実な改善を(具体的取り組み)

当院では、以下の点を重視しています。

  • 現実的な治療計画
     時間・予算をふまえた無理のない頻度でプランを作成し、続けられる治療を優先します。
  • 積み重ねを大切に
     当院の治療は短期で劇的に変えるのではなく、日々の施術で確実に効果を積み重ね、結果を出すことを重視しています。
  • 定期的な評価で「見える化」
     姿勢写真や可動域検査などを定期的に行い、小さな改善の積み重ねを実感できるようにしています。
  • 学びの場としての治療
     患者さま自身が身体の状態を理解し、セルフケアに取り組めるよう指導も行います。

終わりに

慢性の痛み改善は「短期集中」ではなく「長期継続」が前提です。
悪い状態は時間をかけて身についたものだからこそ、改善にも時間が必要です。しかしそのプロセスは、積み重ねるほど身体に確かな変化を残すものです。まさに積立治療ですね。
「継続は力」。資産形成やダイエットと同じように、焦らず一歩一歩を大切にしながら、恒久的な改善を目指し、進んでいきましょう。


*本記事は一般の方にもご理解頂ける事を趣旨としているため、医学的には適切でない表現が含まれている場合がありますが、予めご了承ください。

西山 伸夫
安曇野にしやま整骨院 院長 
柔道整復師 修士(健康科学)
痛みと姿勢治療の専門家

安曇野市 穂高の整骨院
腰痛 肩こり 不調の原因を特定し、
日常動作と姿勢の矯正で根本改善を目指す。

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