顎関節症の本当の原因は“かみ合わせ”だけじゃない
今回も顎関節症についてお話します。先日私が読んだ書籍『顎関節症とかみ合わせの悩みが解決する本』から学んだことや、私自身の考えも含めて、シェアさせて頂きます。
顎関節症と聞くと「かみ合わせが悪いから起こる」と思われがちですが、書籍では その考えが誤解である理由 をとても分かりやすく説明しています。
読んで特に印象に残ったポイントをシェアします。
「顎関節症=かみ合わせが悪いから起こる」
多くの人がそう考えていますが、実はこれは誤解です。
かみ合わせが良くても顎関節症を発症する人はいますし、
かみ合わせが悪くても問題なく生活している人も多く存在します。
顎関節症は 複数の寄与因子が重なって発症する“多因子性の問題” だという事です。
顎関節症に関わる主な寄与因子
① メンタル(緊張しやすさ)
ストレスで筋緊張が高まり、無意識に噛みしめや歯の接触が増えます。
② TCH(Tooth Contacting Habit:歯を接触させるクセ)
実はコレが最重要因子。
本来、歯が触れ合う時間は 1日のうち20分以内 が正常です。
しかしTCHがあると、ほぼ1日中噛みしめに近い状態になり…
- 咀嚼筋が常に緊張
- 筋スパズムが起きる
- 顎関節に圧力が加わる
という悪循環に入ります。
③ かみ合わせの問題
前回投稿した記事噛み合わせの乱れが引き起こす肩こり・頭痛のメカニズムでも触れましたが、かみ合わせが悪い→無意識にかみ合わせを合わせようと噛みしめてしまう→顎関節症という因果関係も確かに筋は通っていますが、単独で顎関節症を決定づけるものではないという事。
④ 関節そのものの構造的問題
下顎頭(顎関節を構成する骨)の形がよくなかったり、左右差があれば、やはり顎関節の適合性が悪くなったり、負担が増える可能性は考えられます。
⑤ 筋力不足(舌骨筋群・頚部支持筋など)
単純に筋力がなければ、ある程度の咀嚼運動で筋肉は疲労しやすく、筋肉由来の顎関節症は発生しやすくなる可能性があります。
痛みがあるときに“かみ合わせ治療”はやってはいけない
痛みが出ている時期は、
- 咀嚼筋のスパズムが起こっている
- 下顎が疼痛側へ変位している
- 一時的に噛み合わせがズレている
という状態。
この時期に歯を削ったり噛み合わせを変える治療をすると、
本来の噛み合わせに戻れなくなるリスク があります。
痛いときはかみ合わせ治療ではなく、痛みや筋緊張の改善が最優先という事です。
顎関節症の多くはかみ合わせ治療をしなくても改善できる可能性がある
多くの顎関節症は、かみ合わせ治療なしのケアで良くなる事例が多いようです。
- 生活習慣の改善
- 姿勢の修正
- TCHの解消
- 咀嚼筋の負担を減らす工夫
これらを行うことで、ほとんどのケースは長引かずに治っていきます。
マウスピース治療の誤解
◉効果があるのは“歯の磨耗防止”がメイン
夜間の歯ぎしりは、覚醒時以上に強く噛みしめ、歯を摩耗させます。マウスピースは、それらを保護する事は期待できますが、顎関節症の原因のTCHそのものを治すわけではありません。
◉むしろ“噛んでしまう”タイプの人には逆効果
マウスピースがある事でより安心して噛みしめることで、TCHに拍車がかかり、咀嚼筋がより緊張する場合があります。
私の考え
姿勢は顎関節症の隠れたキーファクターである
噛みしめるクセ(TCH)がある事が、顎関節症の発症に大きく関わっている事が書籍を通じて良く理解できました。
では、TCHはなぜおきるのでしょうか?それは、当院の施術理論でも大切にしている、日常動作や姿勢、メンタルが大きく関わっていると思います。
例にすると、前方頭位・猫背・ストレートネック → 舌骨筋群が緊張 → 咀嚼筋も連動して硬くなるのです。これは以前投稿した記事その肩こりや頭痛、顎が原因かも?でも触れましたが、
- 首が前に出ている
- 背中が丸い
- 肩がすくむ
そんな姿勢は、舌骨筋群が下あごを引き下げ、口を開けようとする→それに抗うように、咀嚼筋が緊張しバランスをとろうとする事がおきます。
よって、歯が接触していなくとも、猫背・ストレートネック・頭部前方の姿勢はTCHを悪化させ、顎関節症のリスクを引き上げると考えられます(下図参照)。

かみ合わせより先に取り組むべき“3つの改善戦略”
① 姿勢のリセット(特に頭の位置・頚部・胸郭)
・頭が前に出ない位置
・胸郭の引き上げ
・下顎がぶら下がるニュートラルの位置を学ぶ
・上位頸椎の矯正(顎関節の運動に深く関わる頸部、頭部、顎の位置関係に深く関わる)
② 日常生活動作の改善
・噛みしめない
・歯を離す習慣(リマインド)
・同じ姿勢で長く作業しない
・頬付けを片方でつかない
・片側だけで噛まない
③ セルフケアとメンタルケア・ストレスマネジメント
・咀嚼筋回りのマッサージ
・鏡を使った顎関節リハ
・腹式呼吸
・軽い運動
・緊張の自覚を高める(張り紙等を使って噛みしめに気づく)
これらを整えた上で、
どうしても必要な場合のみ、かみ合わせの治療を行うのが正しい順序 です。
まとめ:顎関節症を治すカギは“かみ合わせ”ではなく“生活習慣と姿勢”
顎関節症は、かみ合わせだけでは説明できない複雑な問題です。
最も大きな影響を与えるのは TCH(歯の接触クセ) と筋緊張、そして姿勢。
痛みがある時は歯を削らず、まずは以下を優先しましょう:
- 歯を離す習慣づくり(TCHの改善)
- 姿勢の修正
- 生活動作の見直し
- ストレス管理
- セルフケア
これらを行うことで、多くの顎関節症は自然に改善していきます。
これを理解し、歯科と整骨院が連携しながら患者さんの健康を支えることが、根本的な改善への道だと考えています。
参考図書:木野孔司「顎関節症とかみ合わせの悩みが解決する本」
*本記事は一般の方にもご理解頂ける事を趣旨としているため、医学的には適切でない表現が含まれている場合がありますが、予めご了承ください。
西山 伸夫
安曇野にしやま整骨院 院長
柔道整復師 修士(健康科学)
痛みと姿勢治療の専門家
安曇野市 穂高の整骨院
腰痛 肩こり 不調の原因を特定し、
日常動作と姿勢の矯正で根本改善を目指す。
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