肩こりや頭痛といえば、多くの人が「姿勢が悪い」「血行が悪い」「ストレスが原因」と考えがちです。しかし、それらの症状には「慢性上咽頭炎」が関与している可能性があります。
上咽頭とは、鼻の奥、喉の最上部に位置する部位であり、ウイルスや細菌が侵入しやすい場所です図1。慢性的な炎症を起こすと、免疫系の乱れだけでなく、自律神経のバランスを崩し、肩こりや頭痛、さらにはメンタル面にも影響を及ぼすことが考えられます。

本記事では、慢性上咽頭炎と肩こり・頭痛の関係について、迷走神経の働きや自律神経の仕組みを踏まえて詳しく解説します。
1. 上咽頭炎とは?なぜ慢性化するのか?
上咽頭は、鼻と喉の間にある部分で、免疫系がウイルスや細菌を防ぐために働く場所です。しかし、現代人の生活環境では、この部分が慢性的に炎症を起こしやすくなっています。
上咽頭炎が慢性化する要因
- 口呼吸:鼻呼吸に比べてウイルスや細菌が直接喉へ入りやすい
- 大気汚染:排気ガスや有害な物質を吸い込みやすい
- 乾燥:エアコンの使用やマスク生活による粘膜の乾燥
- ストレス:ストレスによる免疫低下
- 鼻炎や副鼻腔炎の影響:アレルギー性鼻炎や慢性副鼻腔炎が続くと、上咽頭の炎症も持続しやすい
- 低気圧の影響:気圧が下がると、静脈やリンパの流れが悪くなり炎症が悪化
上咽頭炎は慢性的に存在することが多く、鼻の奥の違和感や後鼻漏、喉のイガイガ感が続いたり、すぐに風邪をひきやすい等の特徴があるようです。
2. 上咽頭炎と迷走神経の関係——肩こりや頭痛の原因になる理由
上咽頭には、迷走神経(副交感神経系の主要な神経)の感覚神経が豊富に存在しています。この迷走神経が慢性的な炎症によって刺激されると、以下のような経路で問題が発生します。
① 迷走神経の刺激が自律神経を乱す
上咽頭にある迷走神経の感覚神経が炎症により過剰に刺激されると、その情報は延髄を経由して視床下部に伝えられ、自律神経のバランスが乱れます。結果として、交感神経の過剰な興奮や、副交感神経の低下が生じ、次のような症状が現れます。
- 肩や首の筋緊張が高まり、肩こりや頭痛が悪化
- 自律神経失調症による全身の倦怠感、疲労感
- 血流の悪化による冷え性、胃腸の不調
② 副神経との関係で頸肩の筋肉である僧帽筋・胸鎖乳突筋が硬くなる
肩こりや頭痛に関連する筋肉である 僧帽筋や胸鎖乳突筋 は、以外な事に脳神経の副神経(よって支配されています。副神経は迷走神経と密接な関係があり、迷走神経の異常が副神経にも影響を与えることで、肩こりや首のこりを引き起こす可能性があります。
例えば、慢性上咽頭炎によって迷走神経が刺激されると、副神経の働きも変調をきたし、結果として僧帽筋や胸鎖乳突筋が緊張しやすくなります。これが、上咽頭炎を持つ人に肩こりや頭痛が多い理由の一つと考えられます。
3. 上咽頭炎が自律神経とメンタルに及ぼす影響
① ストレスとセロトニンの関係
慢性上咽頭炎による迷走神経の過剰刺激は、延髄の縫線核(セロトニンを生成する部位)に影響を与えます。セロトニンは「幸福ホルモン」とも呼ばれ、メンタルの安定に重要な役割を果たしますが、縫線核が持続的に刺激されるとミクログリア(脳の炎症を促す細胞)が活性化し、結果としてセロトニンの分泌が低下します。
その結果、以下のようなメンタル不調が現れることがあります。
- うつ症状(気分の落ち込み、意欲低下)
- 不安感の増大
- 睡眠の質の低下
抗うつ薬によるセロトニン補充では、体内のバランスを根本的に整えることは難しく、むしろ過去には自殺者が増えた歴史もあります。このような背景を考えると、薬に頼らずに根本原因(上咽頭炎)を改善することが重要だといえます。
4. 上咽頭炎の治療と予防——EAT療法と日常ケア
① 上咽頭擦過療法(EAT)
慢性上咽頭炎の治療法として、上咽頭擦過療法(EAT) があります。これは、塩化亜鉛などの薬液を塗布しながら上咽頭を擦過し、炎症を鎮める治療法です。日本でも一部の耳鼻咽喉科で実施されており、慢性風邪や自律神経失調症、頭痛に効果があると報告されています。ただ、この治療法はかなり激痛を伴うようです・・・。
② 日常生活でできる予防・改善策
そこで重要になるのが、日頃からのセルフケアです。上咽頭炎を予防・改善するために、以下を意識的に実施していきましょう。
- 鼻うがいの実施(生理食塩水を使用)
- 口腔内のケア(歯磨き・舌磨き)
- 表情筋や僧帽筋・胸鎖乳突筋のマッサージ
- 鼻呼吸を意識し、口呼吸を避ける
まとめ:肩こりや頭痛の原因は、上咽頭炎かもしれない
肩こりや頭痛は整形外科領域の問題として扱われがちですが、実は上咽頭炎が関与している可能性 があります。
- 肩こりや頭痛が慢性的にある
- 自律神経失調症状がある
- 慢性的な鼻炎、咳がある
- 風邪をひきやすい
- 頭がぼーっとする、不眠等
以上の症状が続いている場合は、一度慢性上咽頭炎を疑った方が良いのかもしれません。
上咽頭の炎症が迷走神経を刺激し、副神経や三叉神経にも影響を与えることで、僧帽筋や胸鎖乳突筋の緊張を引き起こし、肩こりや頭痛につながるのです。
肩こりや頭痛、自律神経失調症状がある方、まずは気軽にできる鼻うがい等からはじめてみる事をお勧めいたします。
最後まで読んで頂きありがとうございました。
参考文献
1)自律神経を整えたいなら上咽頭を鍛えなさい 堀田 修
*本記事は一般の方にもご理解頂ける事を趣旨としているため、医学的には適切でない表現が含まれている場合がありますが、予めご了承ください。
西山 伸夫
安曇野にしやま整骨院 院長
柔道整復師 修士(健康科学)
痛みと姿勢治療の専門家
安曇野市 穂高の整骨院
腰痛 肩こり 不調の原因を特定し、
日常動作と姿勢の矯正で根本改善を目指す。
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