肩コリは肩を揉んでも治らない?-肩コリの原因とはー

こんにちは。安曇野にしやま整骨院の西山です。

肩こりで悩まれている方は多く、腰痛と並んで国民病とも言われています。

肩こりは生活の質を低下させていると考えているにも関わらず、具体的な対処をしておらず、湿布や痛み止め等で放置をしている方が多いようです1)

それでは肩こりを根本的に治療するためには、どのような考え方が大切なのでしょうか。

本記事でお伝えしていきます。

肩こりに対する湿布や肩のマッサージは、根本的な解決にはならない

肩こりに対し、湿布や肩のマッサージ等は、一時的には楽になっても、すぐに戻ってしまい、慢性的症状に悩まれている方が多いのが現状です。

その理由は、肩の筋肉のコリは結果であって、根本的な原因ではないからです。

肩こりの根本的な原因とは

それでは、肩こりの原因は、主にどのようなものがあるのでしょうか。以下に解説していきます。

不良姿勢とインナーマッスルの低下

誤った日常生活の姿勢(足を組む、スマホを下向きで作業する等)や運動不足等の悪い習慣が継続していると、インナーマッスルが低下し、足部、骨盤、背骨等の骨格が歪みます。そして、猫背やストレートネック等が生じ、頭部が前方へ変位します図1)2)

図1 肩こりをおこしやすい姿勢 2)より転載

頭部は人体のパーツの中でもとても重く、5~6kg(ボーリングのボール程度の重さ)あると言われています。そのような重い頭部が、本来の重心よりも前方に変位すると、頭部を支えるための頸~背部、肩への負荷が増加します。

頭を前に15°傾けると頸椎にかかる負荷は12kg(正しい姿勢の約2倍)、60°傾けると27kg(正しい姿勢の約5倍)になるとされています3)

(詳しくは痛みのない身体を目指すために必要な3つの事記事参照)

誤った呼吸法

誤った呼吸法も肩こりの原因となります。

効率よく呼吸を行うためには、腹式呼吸が重要です。

腹式呼吸とは、横隔膜をしっかり収縮させる呼吸法です。

横隔膜がしっかりと収縮する事で、胸腔が十分に広がり、肺は下部までしっかり膨らむ事ができます。

不良姿勢やストレスで緊張した状態が続くと、 横隔膜が上手く働かなくなります。

すると、胸郭下部が上手く広がらない分を、上部を広げる事で代償しようとします。

すると、頸肩まわりの筋肉が緊張し、肩が持ち上がった状態となります。いわゆる「肩で息をする」状態です。これを奇異呼吸と言います。(詳しくは「正しい腹式呼吸トレーニング」記事参照

頸椎への負荷による機能障害

前述したような不良姿勢が続くと、頭部の重みの負荷が頸へかかり続けます。

すると、まず初期には頸部を支える筋肉が強く緊張した状態を維持します。

しかし、筋肉は収縮→弛緩→収縮という活動を繰り返す事で、ポンプ作用が働き、筋由来の老廃物は、周囲の静脈やリンパを介して代謝されますが、緊張した状態が継続されると、このポンプ作用が阻害され、筋肉は異常に硬くなった状態となります。すると、筋肉の神経は過敏になり、いわゆる筋肉のコリとして自覚されます。

さらに負荷が継続されると、頸椎を構成する関節に問題が生じてきます。猫背やストレートネックの状態においては、頭部と上位頸椎を構成する関節(後頭環椎・環軸関節)が過伸展された状態となり、常に関節に圧迫がかかった状態となります図1

異常な圧迫がかかった関節というのは、正常な関節運動ができません。特に制限されるのが、後ろを振り返る、頸を屈伸する運動です。なぜなら、上位頸椎はこの動きへの関与が大きいからです図24)

図2 脊柱のそれぞれの運動機能 4)より転載
頸椎は7つあり、それぞれ得意とする運動機能は違う(赤い四角内)。特に、上位頸椎(C1、C2)は他の関節と比べ、回旋(振り返る動作)の機能に特化している事が分かる。

上位頸椎の運動が制限されると、動かない分を、中位、下位頸椎が代償的に動こうとします。しかし、これらの頸椎は頸を振り返る(回旋)動作を得意とする関節ではありません。

本来得意としない関節構造に負荷がかかり続けると、徐々に関節の性質(組織学的構造)が悪い方へ変化していきます。初期は関節をつなぎとめる靱帯の短縮、硬化、次に関節の軟骨の変性、さらに進むと骨が変形し、さらに関節運動が損なわれると同時に、不可逆的な状態に陥っていきます。

関節を構成する靱帯等には、関節の状態を把握するためのセンサー(機械受容器)が存在します。上記のような関節が異常な状態となると、その情報は脊髄へ伝えられ、関節を保護するため、反射経路として、その周囲の筋肉がさらに緊張し、筋肉のコリが増強します。

顎関節の問題

前述した不良姿勢となると、顎関節の咬合異常が生じて肩こりの原因になります。なぜなら、顎関節を正しく動かすためには、顎だけでなく、頸椎と顎の関節、筋肉が正しいバランスが保たれている必要があるからです。

顎関節は、頭蓋骨と関節を形成していますが、頭蓋骨は上位頸椎と関節しており、安定した咀嚼運動を行うためには頭蓋骨と上位頸椎の関節が正しい位置関係で機能し、筋肉が働く必要があります。例えば、猫背やストレートネック等によって頭部前方位となると、上位頸椎と頭蓋骨の関節(環椎後頭関節)は過伸展した状態となります図3

図3 頭部前方位における顎関節の状態
頭部前方位になると、舌骨筋の作用で下顎は下方へ引き下ろされ、開口位になりやすくなる。それに抗うように、噛みしめるための筋肉は緊張し、顎関節のバランスは崩れる。4)より転載

すると、舌骨とともに、下顎を引き下げる舌骨筋が緊張する事で、下顎が後・下方へ引き下げられ、口が開きやすい状態となります。

しかし、常に口が開いてしまっては問題が生じるので、無意識に口を閉じるための筋肉(咬筋や側頭筋等)が緊張し、バランスをとろうとします。

すると、顎関節を動かすための筋肉のバランスはさらに崩れてしまい、さらなる咬合異常、顎関節症を引き起こし、頸、肩の筋肉は緊張しやすい状態となります。

ストレス

ストレスは、自律神経の交感神経を優位にします。

交感神経は、戦闘モードの時に働く神経であり、外敵と戦うために、脊髄での反射を介して全身の筋肉の緊張を強くさせます。

その中でも、特に顎や頸の筋肉は緊張しやすくなります。

この反応は、一時的な物であれば問題ないのですが、ストレス過多の状態が続くと、リラックスするための副交感神経とのバランスが崩れ、常に力が入った状態をつくります。

すると、筋肉は長期間の緊張状態を強いられ、筋内の毛細血管やリンパは圧迫され、血流や代謝が悪化し、筋肉のコリの原因となります。

また、ストレス状態となると、自然と体は猫背となり、うつむき加減になり、力学的負荷も増加します。これは、 脳の縫線核にあるセロトニンという、ストレスで応答する神経細胞が影響していると考えられます。

なぜなら、セロトニンはストレス化では分泌が減少し、セロトニンは呼吸や姿勢保持を促通させる働きがあるからです5)

肩こりは、どのように治療すれば良いか

上記のように、肩こりには様々な原因があります。よって、筋肉のコリは結果であり、原因ではない事が多いです。

以上の理由を踏まえ、当院では下記の検査、治療で肩こりへアプローチします。

姿勢や日常動作等の検査および矯正

姿勢写真を撮影する事で、骨盤から脊柱、頭部の位置関係を評価し、頸部への力学的負荷がかかっていないかを調べます。

問題が認められれば、骨盤及び脊柱の矯正と、姿勢を支えるインナーマッスルの強化を行います。

また、普段のデスクワークやスマホ操作、書き物動作等の姿勢もチェックし、正しい姿勢アドバイスを実施する事で、負担の軽減を図ります。

上位頸椎の機能改善アプローチ

上位頸椎の機能が失われる事で、頸椎および顎関節は正しく動かなくなり、肩こりや頭痛を生じさせるだけでなく、姿勢全体の歪みにもつながるため、とても重要な部位です。

よって、上位頸椎の動きを改善させるため、専門的な手技を用いて、機能改善を目指します。

呼吸指導

肩こり症状の方は、誤った呼吸パターンが定着しています。

そのため、姿勢指導と同時に、正しい呼吸法のトレーニングを覚えて頂き、習慣的に実施してもらう必要があります。

呼吸に関わる筋肉は、姿勢を支える役割もあり、両者は一体です。

正しい呼吸ができなければ、正しい姿勢を維持する事はできないと考えております。

まとめ

・肩こりは、不良姿勢や日常動作、ストレス等に原因がある
・肩こりでは、上位頸椎の機能障害が生じている事が多い
・改善のためには、姿勢矯正や、呼吸法の修正、上位頸椎への専門的な治療が必要

以上、ご参考になれば幸いです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

参考文献
1)第一三共ヘルスケア株式会社; 30代・40代の全国47都道府県男女50,000人に聞く、肩こり・腰痛調査
2)新関 真人;マイクロ(部位別)姿勢検査 ;図解姿勢の検査法 ; 神奈川 ;医道の日本社; 2003.
3)坂井 建雄, 中村 格子, 谷本 道哉;人体の取扱説明書;ニュートン ; 東京 ;株式会社ニュートンプレ
4)竹井 仁;頭部前方位と胸椎後弯のアライメント・症状・原因 ;姿勢の教科書 ; 東京 ;ナツメ社; 2015.
5)有田 秀穂;リハビリテーションにおけるセロトニン神経の役割;Jpn J Rehabil Med VOL. 48 NO. 5 2011 .

*本記事は一般の方にもご理解頂ける事を趣旨としているため、医学的には適切でない表現が含まれている場合がありますが、予めご了承ください。

西山 伸夫
安曇野にしやま整骨院 院長 
柔道整復師 修士(健康科学)

安曇野市 穂高の整骨院
腰痛 肩こり 不調の原因を特定し
骨盤、姿勢矯正で根本改善

ホームページ↓
http://azumino-nishiyama.com

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